ソニーカセットデッキTC−K777ESUの修理(後編)

 TC-K777ES2

  前回メカ組みが何度やってもうまくいかず、とりあえず音出ししてみたいこともあって「ピンチローラーに熱収縮チューブで細工する」という素人修理丸出しの仮対策をやってとりあえず音の出た777ES2ですが、所詮熱収縮チューブなんて長く持つはずもありません。やはりきちんと対処したいと思っていました。

 そんな折り、当ページからもリンクさせていただいている「高速化事業部」の管理人、りょうさんからアドバイスをいただきました。

「ヘッドブロックを上げる専用の電磁プランジャの取り付けがゆるんでいるか、この取り付け穴は長穴で調整可能なのでこの部分の調整&締め付けだけで改善できるかも知れない」との事。

 なるほど、確かにその部分は特に調整もせず組み立てていました。こうなると気になってしまいまして、再度バラしにチャレンジする事にしました。よみがえれ!800円のTC−K777ES2!!

 今回はなるだけバラしていく課程を多く写真に残すつもりでしたが、やってると熱くなってついつい忘れたりとかもしてます。また、作業中に左手で写真撮ったりしますが、私の持っているデジカメが重く、また持ちにくい縦型デザインの為、撮りにくくピンボケやブレているものもあります。お見苦しいかも知れませんがご容赦願います。

トップパネル

上部のプレートを外します。厚い鉄板に銅メッキ。さらに制震シートが貼ってあります。お金かかってます。

前面パネル外す

前面パネルを外し、前面シャーシの一部を外します。底面のネジ2本とシャーシに止めてあるネジ2本を外すとデッキメカが取り出せます。

カセットドア左側

デッキドア左のバネ2本を外します。

カセットドア

デッキドア右側のネジ2本を外します。

ドアギア

デッキドアの開閉ギアを外し、デッキドアから伸びている棒をギアから外します。

ドア裏ネジ

デッキドアはメカ後ろ側からも2本のネジで止まっていますのでこのネジを外します。

ピンチローラー

ピンチローラーを外します。送り出し側(左側)はナットで止めてあります。バネは2本使ってありますので注意。何枚かのワッシャが入っていますので無くさないように。巻き取り側(右側)はEリングで止めてあります。バネは1本。同じく何枚かワッシャが入っています。初めてバラす時はここの軸のグリスがネットリと固着してますので。良くふき取って新しいグリスを塗っておきましょう。

ヘッドプレート

ピンチローラーを外したらヘッドブロックの付いているプレートを外します。表側がネジ4本、裏からEリングで1カ所止まっています。このプレートの下にはローラーなどの小さな部品がただ挟まった状態で付いているのでこれらを無くさないよう注意が必要です。

モーターコイルプレート

メカ裏側よりネジ4本を外してモーターコイルプレートを外します。コードに注意してください。あまり引っ張るとハンダ付け部分が取れてしまいます。(私も2カ所切ってしまったので再ハンダ付けしました)

フライホイール

モーターコイルプレートを外すと大きなフライホイールが出てきます。黒い方がマグネットですのでコイル側になります。間違え無いように。

キャプスタン取り外し

フライホイールとキャプスタンを抜きます。キャプスタン側にオイルシール(ワッシャ)が入ってますので無くさないように注意。

プレート固定金具とローラー

話が前後しますが表側のヘッドプレートを外した後です。トの字型の金属板がヘッドプレートを止めている金具です。小さな金属製のローラーがありますので注意。これが左右にあります。その下のローラーも無くしやすいので注意。これは3個あります。初めてバラしたときはこのあたりも固着でベタベタです。良くふき取って新しくグリスアップしましょう。

プランジャ取り外し

メカ裏側より電磁プランジャ部分を外します。ネジ4本で止まっています。

プランジャを外したところ

プランジャを外した所です。プランジャよりの継ぎ手が見えます。

リール部を外す

リール部を外します。ネジ3本で止まっています。

ジョイントを外す

リール部を外す時にこの金属板も外します。この板は再生用アイドラーを動かす為のものなので組み立て時に動かしてみて取り付け位置を調整します。

リール部をバラす

リール部をバラします。ネジ3本で止まっています。

アイドラー部

バネの付き方を良く見ながらリールを取り外すとアイドラーが見えてきます。左のL字型のダイキャストのアームに付いているのが早送り・巻き戻し用アイドラー、右側のダイキャストアームに付いているのが再生専用のアイドラーです。初めてバラしたときはおそらくこのアームが全く動かないほどグリスが固着していると思います。前回は無理矢理このアームを取り外しました。

アイドラー

早送り・巻き戻し用アイドラーをバラしてみました。今回、何か代替になる水道用のゴムパッキンとかが無いか探してみましたが、ちょうど良いものがありませんでした。再生専用アイドラーも同じく探してみましたがやはりぴったりのものは近所のホームセンターではみつかりませんでした。

アイドラー直径

早送り・巻き戻し用アイドラーは内径9.5ミリ(ゴムなので実際はこれより少し小さい方が良い)直径14ミリのゴムパッキン状ものがあれば使えると思います。再生専用アイドラーは直径12ミリあれば代替えになると思います。内径は取り外す為の小さな六角レンチが手元に無かったので計れませんでした、すみません。

アイドラー研磨

とりあえず、今付いているゴムをそのまま使います。1000番の紙ヤスリの上を少し力を入れながら転がしてその後ゴム用アルコールで表面を清掃します。

再生アイドラ

ピンボケ・ブレで非常に見にくいですが、再生専用アイドラーです。金色の部分が細い六角ネジで止まっていますのでこれを外せば交換できますが、このサイズのパッキンはちょっと代替品をみつけるのは難しいかも知れません。内径は計れませんでしたが、外径は11.5ミリ以上あれば大丈夫なようです。

アイドラー固定ピン

早送り・巻き戻し用アイドラーの付いているL字型アームの支点です。初めてバラす時はここのグリスが完全に固着していてこのピンを抜くのにとても苦労します。私は結局パイプレンチでアームから押し出せるだけ押し出して、出たところをペンチで思いっきり抜きました。良くふき取ってグリスアップしてやるとあれだけ抜けなかったのが嘘のようにスムーズに動きます。

アイドラーテスト

これから後は逆手順で組み立てます。リール、アイドラー部は切り替えのプレートを動かしながらモーター軸を両方向に回してみてスムーズに切り替わるか確認します。また、プランジャがらの継ぎ手を組むときは再生専用アイドラーがスムーズに切り替わるかも確認しながら組み立てます。

ベルト

アイドラーモーターのベルトは今回ピッタリな代替品が見つかりませんでした。最初から付いていたベルトがまだ十分使えそうなのでそのまま使うことにしました。また、キャプスタンベルトは前回TC−KA7ES用のを使いましたが、やはり純正より細くて心許なかったので、今回ビクターのTD−V721用のキャプスタンベルトを使いました。長さはピッタリで太さもほぼ純正と同じです。おまけにソニーのベルトより安いです。

デッキメカ前

今回は教えていただいたようにプランジャ部分を良く調整しながら組み立てました。また、今までプランジャを取り付けてからヘッドプレートを取り付けていたのですが。今回はヘッドプレートを取り付けてからプランジャ部分を取り付け、調整しました。そうすると完全にヘッド・ピンチローラーが所定の位置まで上がるようになりました。やったね!。これで熱収縮チューブとおさらばだ!。

テープスピード調整

完全に再生できるようになりましたが、我が家のテープライブラリーを再生すると若干テープスピードが遅い様です。今回は高速化事業部の掲示板でg10さんと言う方に教えていただいた方法で調整しました。発振器付きのギターチューナーを使い、我が家のメインデッキであるアイワXK−009で録音、TC−K777ES2で再生してギターチューナーで測定する。テープスピードは写真の半固定抵抗で調整します。プロから見れば「アホか」な調整方法でしょうけど、私には十分です。そりゃ機材があれば言う事無しなんでしょうけど、私自身が気持ちよく聞ければそれでいいので。

動作中

メカ部を取り付け元に戻して完成!であります。

メカ下カバー

TC−K777ES2はヘッドの下にカバーがあるのですが、私の入手した機体には付いていませんで、ぽっかり穴が開いていました。どう入手したもんかと思っておりましたら、前述の高速化事業部の管理人であるりょうさんから譲っていただきました。なんでも捨てたつもりがこのカバーだけ偶然出てきたとかで。無事このように活用しております。おかげさまで見栄えもばっちりになりました。ありがとうございました。

 

  ともあれ、これで無事修理完了しました。このデッキが再生する音はとても心地よい音ですっかり気に入ってしまいました。うちには測定機材も古いオシロくらいしか無く、テストテープとかも無いので厳密に調整は出来ませんが、いつか機材をそろえたら調整を追い込んで使いたいなと思わせるデッキです。非常に修理満足度の高い今回の作業でした。

(2005年5月 記)


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