パナソニックMSXパソコンFS−A1STの修理
パナソニックのMSXパソコンFS−A1STです。8ビットパソコンMSX末期の製品でMSX turboR規格です。1983年にアスキーが提唱した規格に参入する形で一時期はいろんなメーカーから百花繚乱という感じで製品が発売され、MSX自体もMSX2、MSX2+と規格の拡張が行われ性能アップして行きましたが、最終的には一部熱狂的ファンの支持しか得られず徐々に新製品を出すメーカーも減っていきました。
その中でも末期まで気合いが入っていたのがSONYと松下でしたが、turboR規格を前にSONYが撤退したため、turboR規格は松下1社からだけ発売されました。その松下もこのFS−A1STの後、FS−A1GTという機種を最後にMSXから撤退し、MSX市場は事実上消滅しました。その後、MSXに魅せられたファンたちが細々と同人活動を続けていましたが、その甲斐あって近年MSXマガジンが復刊されたり、MSXアソシエーションによる公式エミュレーターの開発・発表等再評価の動きが活発になってきています。今現在コンピュータ関連の仕事をしている方の中にもMSXがなかったら今の仕事はやってないという方も多いでしょう。
メーカーを超えた統一規格、安価なマシンの提供、仕様が公開されたオープンアーキテクチャでその気になれば周辺機器を自分で作れる、万一プログラミングに挫折してもカートリッジスロットのおかげでゲーム機としても使える・・等々今考えてもその思想はユーザーフレンドリーかつ最強の8ビットパソコンだと思います。PC-88やPC-98のユーザーにはバカにされたけど。
今回の機体はハードオフで「Nキー入りっぱなし。FDD読まず」で3,000円でした。残念ながら付属品は無し。
(1)状況確認
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電源を入れると起動画面は出ます。 懐かしいですね〜。 この画面を見るだけでハァハァしてしまう人も多いかと(^^;。 東宝特撮映画マニアがオールナイト特集上映でスクリーンに東宝マークが出ただけで映画も始まってないのに大拍手になるのと同じようなもんでしょうか?(違うか)
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システム画面も問題なく出ました。このころになるとワープロ機能はもとよりPCM音源とかかなりの機能を搭載していました。8ビットのホビーパソコンに果たして要る機能なのかは別として。(注:MSXは8ビットCPUですが、唯一TurboR機だけは16ビットCPUを積んでいました)
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BASICの画面に切り替えると何も触っていないのに”n”の文字が打たれていきます。 おそらく何かの原因でキーボードの”n”キーがショートしているのでしょう。
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フロッピーディスク起動を試みると、モーターの回転音はしますが、I/Oエラーとなって読み込めません。このあたりの機種はコストダウンの為FDDがゴムベルト駆動なので、おそらくベルトが切れたか伸びたかと思われます。
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カートリッジゲームを起動。すんなり起動しました。 このあたりには問題は無いようです。(ブレた画像ですみません)
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(2)作業状況
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本体を開け、本体上カバーを取ります。かなり本体カバーはがっちりと組み合わさっていてなかなか外れてくれません。開けるというより「割る」という表現がぴったりなくらい外れにくいので破損しないよう気を付けて下さい。特にFDD回りを外すときは気を付けましょう。イジェクトボタンを押さないと外れないです。カバーと基板がコードで繋がっていますので、コードを切らないようにゆっくり開けて基板のコネクタを外します。FDDはこのようにマイクプラグと共締めされていますので、これも外します。FDDは計5カ所のネジで止められています。
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FDDは1本のフラットケーブルで基板に繋がっています。フラットケーブルが折れたりしないように慎重に基板側のコネクタを外します。このフラットケーブルというものは折れ等で簡単に断線します。折れたら両端の端子にテスターを当ててみないとケーブルが断線したかどうか判らない上にそうそうピッタリな代替品は見つかりません。気を付けましょう。
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FDDユニット裏側です。4本のネジを外しカバーを取ります。
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やはりベルトの劣化でした。表面がツルツルの上、それほどではありませんが伸びており、回すとカラ回りします。
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ベルトを交換するにはこの白いプラスチックパーツを外さないといけません。
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交換するベルトです。松下のお客様相談センターに聞いても在庫の有無がわからず、結局全国のサービスセンターに聞いてくれてようやく在庫が有ることがわかり、その旨伝えた上で近くの家電店から取り寄せてもらいました。古い機種なので把握してなかったようで在庫ももうかなり少なくなっているようです。
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ベルトを付け替えて白いパーツも元通り取り付けます。ベルトをかける時はねじれたりしないように取り付けましょう。また手の脂などが付いてしまった場合はゴム用のアルコールできれいにふき取って下さい。
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次にキーボードを取り外します。3カ所のネジで固定されています。 作業しながら左手で撮ったりしてるんで手ブレご容赦。
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キーボードからは3枚のシート(メンブレイン)が重なって1つのコネクタに繋がれています。破損しないよう気を付けて取り外します。
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キーボードユニット裏側です。18カ所の小さなネジを外して開けますが、中は小さなバネだらけなので、ゆっくり丁寧に開けて下さい。キートップ側を下にして伏せて開けないと泣きを見ます。
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外したキートップ側裏です。各キーに小さなバネが入っている構造ですので無くさないように気を付けましょう。ピィ〜ンとか飛ばしてしまったら多分二度と見つからないと思います(^^;。
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キーボードの中には3枚のメンブレインが入っています。このシートの外側2枚がキーを押されることにより接触することでキーが押されたと判断するようになってます。今回のような症状はこの外側2枚のメンブレインが癒着して張り付くか、間に何か導電性のチリやゴミが挟まってショートしている可能性が強いです。
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メンブレインの間を掃除してみます。乾いたケバ立たない不織布とエアーダスターで特に”n”キー部分を重点的に点検します。
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キーボードを元通り組み立て、バネを入れ損なったキーが無いか各キーを点検します。
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メンブレイン3枚のコネクタ部分を重ねて基板コネクタに挿します。決して無理な力は加えないように。
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キーボードを本体に取り付け、本体カバーから来ているコード、コネクタを基板の元の位置に取り付け本体を元に戻します。
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(3)動作確認
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動作確認します。”n”キーの押しっぱなしは解消されました。
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フロッピーディスクからの起動もOKになりました。コンパイルの「ディスクステーション」のNO.4です。懐かしいです。思えばこれがメディアマガジンの先駆けですよね。ソフト会社からサワリの部分を体験版やデモとして提供してもらってそれらを収録して安価に売る、というアイデアはすごいなと思います。媒体はフロッピーから今やDVDが主流になってますけど、このジャンルはまだまだ健在ですね。
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今回はわりと簡単に問題解決出来ました。ただ、MSXに限らず保守部品は年々少なくなってきているようで、いつまで実機を動態保存できるのか・・。どうもエミュレーターってあんまり好きじゃないんですよね、私は。
(2004・10月記)
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