ソニーDATデッキDTC−57ESの修理

 DTC-57ES

 ソニーのDAT(Digital Audio Tape)デッキ、DTC−57ESです(写真上)。91年4月発売。定価88,000円。なかなかツラ構えも良く、サイドウッドも付いて高級感を漂わせながら、前モデルのDTC−55ESより一気に1万円も安くなり高級ブランドのESシリーズでありながら買い得感溢れるソニーの戦略モデルでした。55ESに比べるとかなりなコストダウン傾向がみられ、耐久性が要求されるはずのメカの一部に樹脂パーツを使っていたり、前面スイッチ類も金属から樹脂に変わったりしています。ヘッドも4ヘッドでは無く2ヘッド仕様です。

 DATの歴史はとにかく苦難の歴史と言えます。デジタル録音によるノイズの無い夢のオーディオテープと鳴り物入りで登場したにもかかわらず、出だしでつまづいてしまいます。CDから劣化のないコピーができるのはまかりならんとレコード協会等からの圧力で、CDのサンプリング周波数44.1KHzでのデジタル録音が出来ない仕様となりました。これが一般に「DATってCDから録音できないんだってね。」との誤解を招いてしまいます。DATの出始めは20万円くらいしましたから「こんなに高い機械なのにCDから録音出来ないなんて・・・」そう思われても仕方がありません。もちろんアナログ接続でCDの録音は出来るのですが、やはりデジタルでの録音が出来ないのは魅力に欠けます。

 1990年夏になってようやく各方面との調整がつき、新規格であるSCMS(シリアルコピーマネジメントシステム)が発表されます。これによりCDからの44.1KHzでのデジタル録音が可能になりましたが、デジタル録音されたもののコピー回数は一世代に制限されました。ともあれ、ようやくCDから劣化のない録音が可能になったことで、各社はDAT普及を狙って一斉に低価格の戦略モデルを発表しました。このDTC−57ESもそんなモデルの中の1つでした。

 今回はハードオフで「再生は出来るが、録音は音が途切れる」とイマイチ謎なコメントが付いてリモコン・取説付きで5,000円でした。外観は非常に綺麗でしたが、このDTC−57ESはやはりコストダウンの為かかなりあちこちで故障機体を良く見かけます。私にとって初めてのDATになります。やっぱり当時は高くて買えませんでした。

 

1)状態確認

 持ち帰ってテストをしてみたところ、再生はものすごいノイズでしかも音声は途切れ途切れ、録音もディスプレイ上はちゃんと録音しているように見えますが、再生してみたら結果は同じ。これはこの機種では定番故障とも言えるものです。早速中を開けてみることにしました。

内部

内部です。ESシリーズの割には期待はずれな中身です。とりたてて高級な部品をふんだんに使っている訳でもなく、作りも薄っぺらで制振とかに気を遣っているようにも見えません。まあ価格が価格なので仕方ないでしょう。

電源基板

電源部もとりたてて凝った作りでは無いのですが、価格を考えればまあまあと言えます。

メイン基板

メイン基板です。デジタル部とアナログ部を分けずにこの1枚基板にまとめて処理しています。

デッキメカ

デッキメカ部です。ビデオのメカをそっくりそのまま小さくしたような作りです。

メカ動作

テープを何度もローディング→走行させてメカの動きを観察してみます。とりたてて動きが鈍い所や走行音の異常なども無い様子。この機体はどうも修理履歴があるようで、ブレーキレバー等がどう見ても新しいです。また、普通なら劣化でボロボロになっているはずのヘッドクリーナーのスポンジがかなり綺麗です。どうも一度修理に出してその後あまり使われていない機体のようです。オイシイです。

ヘッドアンプ

この機種で録音・再生時に雑音だらけになる原因で一番多いものは、デッキメカの上についているこの小さい金属箱の中のヘッドアンプ基板のコンデンサ劣化です。まずここを疑ってみます。コネクターを外し、ネジ1本で簡単に取れます。

ヘッドアンプ取り外し

このように簡単に取り外す事が出来ます。

シールドケース

取り外したヘッドアンプ部です。このような金属のシールドケースに覆われています。ケースは基板にハンダ付けされていますので、ハンダを取り除きケースを開けます。

ケースを開けた状態

シールドケースを開けた状態です。見るからに怪しげな表面実装型のコンデンサが見えます。すでにこの時点でコンデンサ漏れの異臭がします。原因はやはりこの基板のコンデンサ劣化と見て間違いないでしょう。

ヘッドアンプ基板

小さな基板に表面実装型のコンデンサが6個あります。これを張り替えます。

コンデンサ除去

コンデンサを除去した状態。すでにそうとうな異臭が漂っています。予想通り激しく吹いており、基板のパターンは腐食寸前でした。パターンを剥がさないようにコンデンサをニッパーで破壊し、黒いプラスチックの基台部分を手で取り除き残った足部分をハンダこてで取り除きますが、腐食がひどくて基台ごと取れてしまうものもあってかなり慎重に作業を行いました。パターンを剥がしてしまうと泣きをみますので。

張り替えた状態

6個のコンデンサを張り替えた状態です。小さいケースに収まるように張り替えないといけないので、配置を検討しながら取り付けていきます。ハンダ付けしたら動かしてはいけません。パターンを破壊してしまいます。

ソウクミ

ちなみに張り替えに自信が無い方は、2005年2月現在まだ部品在庫があるようですので、注文出来ます。

A−2001−587−A RFソウクミ です。

横のカセットテープと見比べていただくと大きさがわかると思います。このデッキは結構安くジャンクが手に入るのでもう一台入手しようと思って手に入るうちに1つ取り寄せてみました。ただ、結構高くて3,800円くらいしました。(正確な値段は失念)

テスト録音

ヘッドアンプを元通り取り付けてCDから録音してみます。仮り組みで動かす場合もヘッドアンプにちゃんとシールドケースを取り付けた状態でないと雑音だらけになりますので、めんどくさがらずケースを取り付けましょう。

メーターパネル

ヘッドアンプを直す前は、録音中に44.1kHzの表示が点いたり消えたりしていたのですが、修理後は点滅しなくなりました。正常に録音出来ているようです。

再生時

再生してみましたら、全く雑音は無くなりました。テープ走行自体は安定しているようなのでとりあえずここまでとしました。

 

 修理後は快調に動いてくれています。DATを所有するのは初めてですが、カセットとは違う魅力がありますね。ESシリーズとは言え普及価格帯のマシンですので、音質的にはこんなもんかなという感じですが、不満を持つほど悪くもありません。デジフィルやDAC周りをいじるともう少しいい音になるのかも。改造にも手を出してみたいのですが、なかなかそこまでは手が出ない(知識が無い?)ですね。57ESは同じような故障機が多く、お値段も手頃に入手できますのでもう一台別の部屋用に欲しいなと思っています。

 (2005・3月記)

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