ソニーCDプレーヤーCDP−553ESDの修理

 CDP-553ESD

 

  ソニーのCDプレーヤー、CDP-553ESDです。1985年発売。定価168,000円。薄型でありながら非常に重いCDプレーヤーです。ESDの「D」は当時まだめずらしいデジタル出力端子付きを意味しますが、現在主流の光デジタルアウトでは無く、同軸ケーブルを使用するタイプです。このCDプレーヤーは単体でも使用できますが、同時発売のDAC「DAS−703ES」と組み合わせてセパレート型CDプレーヤーとしての使用も想定されていました。組み合わせると当時の定価は410,000円でかなり高価な部類に入る製品でした。前モデルのCDP−502ESから引き継がれたリニアモータートラッキング機構は振動にこそ弱いですが、シーク時間などのアクセスタイムは現在のモデルと比べても遜色がない程高速です。一見デザイン上はぱっと見見分けが付かないほど前モデルのCDP−502ESと似ていますが、内部はかなり変更されており、中でもDACはそれまでの16bit積分型から16bitラダー型に変更されています。このあたりがかなり再生音質を変えています。

 また、この機種はデジタルアウトにサブコード無しの信号を出力させることが出来るため、SCMS機能無しのDATでも44.1KHzでのデジタル録音が出来るらしいですが、実験したことが無いので本当かどうかわかりません。

 今回はハードオフにて「電源入りましたが、再生するときとしないときがある」で1,000円で入手。症状よりレーザーピックアップは生きてるなと踏んでの購入となりました。

 ちなみにすでにソニーではこの機種の消耗部品はトレイ関係のベルトを除いて供給終了しているそうです。まぁ、もう20年選手ですからね。

 動作確認してみたところ、電源は入る、トレイの出し入れがちょっともたつく、CDを認識するときとしないときがある、とほぼ表記通りの症状でしたが、再生したときの音質はかなり良く、なんとか直して使いたいとの気持ちを新たにしました。

 

CD部

重いトップカバーを開けます。CDメカ部です。前がトレイ、後ろがチャッキングメカです。この時はちゃんと再生をしてくれていますが、実際は何度もCDを出し入れしないと認識さえしてくれない場合もあります。トレイの出し入れも調子良いとは言えずいずれにしても不安定です。メカ自体は非常に堅牢に作られていて、選曲スピードなどは驚異的に早いです。

チャッキングメカ

CD後ろのチャッキングメカ部です。TC−K777ES2の時に固着で苦労したいやな色のグリスが見えます。・・まぁそれは良いのですが、このあたりを含め何かでメカが全体的に濡れてギトギト光っています。イヤな予感がします。調べてみたら、どうもCRC−556かWD−40の様な潤滑スプレーが全体的に大量に吹き付けられていました。どうも前オーナーはトレイの動きが渋く、CD認識も調子悪いことから上部の通気口あたりからメカ全体に向かってスプレーを吹いたようです。これは始末が大変だ・・・。しかも前オーナーは喫煙者だったようでヤニ臭もします。私も元喫煙者の身ですからあまり偉そうな事は言えませんけど。

電源トランス

トランスはしっかりケースに入ってCDメカの後ろにあります。デジタル・アナログで分かれてはいない様ですが、大きさとしては十分なものが積まれています。

DAC部

デジタル部です。左右対称回路になってます。DACはバーブラウンの16bitDAC PCM53JP−VのKランク選別品が使われています。

アナログ部

回路のほとんどは左右対称ツインモノ構成になっていて、非常にお金がかかっています。ELNAやMUSEといったオーディオ用コンデンサ等がふんだんに使われています。

基板全景

各基板は銅メッキシャーシで完全に仕切られています。このあたりは徹底的にこだわって作られています。それにしても重いボディです。もちろんトップカバーやボトムカバーも全て銅メッキです。

ウエス

まずは吹き付けられた潤滑スプレーの掃除から。ちょっとやっただけでウエスがこの有様です。残っているとロクな事は無いのでバラせる部分はバラして徹底的にふき取ります。

メカ裏

ボトムプレートも外して裏からもふき取ります。このCDメカ部のリニアトラッキングメカ部分の作りは重厚でとても信頼感のある作りをしてます。ちなみに写真右中央の基板やフレキシブルケーブルあたりは触らないように。ここに触れただけでピックアップが静電気破壊を起こしたとの記事が他サイトにありました。

コンデンサ

基板裏側に取って付けたようなコンデンサを発見。何かの対策かな?。

コンデンサ2

もう1カ所ありました。何だろう。

レンズ部を外す

まずはいつものようにイソプロピルアルコールでレンズ表面を掃除。かなりヤニまみれになってましたので、CD読みとりにかなり影響していたと思われます。これだけ汚れているとどうしてもレンズ裏面も掃除したくなります。しかし、当サイトからリンクさせていただいている「にがHP」さんにこの機種のレンズカバーを外してレンズ裏側を掃除していてフォーカス機構を壊したとの記事があったので、今回はレンズ部そのものを外して掃除する事にしました。考えようによってはこのやり方の方が数段危ないんですけどね・・。

レンズ部外したところ

レンズ部を止めている小さなネジを外して裏から綿棒の細いのを差し込み、極力軽い力で掃除します。レンズ部の下にもう一つガラスレンズの様なものがあったのでこれも掃除。レンズ部を元に戻します。

 

 ここまでやったところで仮り組みして動きを見てみます。症状はあまり変わりません。よく観察してみるとトレイが閉まった後チャッキングメカがCDのトレイを下げ、CDが固定されて読み込みが始まるのですが、どうもチャッキングメカの動きが鈍い為、CDがうまく固定されないときがある様です。トレイの出し入れも渋いのでこれも原因かも知れません。このあたりをきちんと直す事にしました。

 

トランス固定プレートを外す

メカ裏側よりトランスを止めているプレートとトレイ開閉用モーターを外し、トレイベルトを外します。トレイベルトは若干伸びており、プーリーは軽い固着がありました。

プーリー

プーリーを外し、古いグリスをふき取りグリスアップします。プーリーにはトレイ開閉用のワイヤーが掛けてありますので、取り外す前に巻き方向を良く見ておきましょう。グリスアップとプーリーの取り付けが終わったらベルトを掛けます。このベルトだけは他にも同じメカを流用した機種がかなりあるらしくまだ部品が手に入ります。

3−671−077−00 FFベルト

4−908−591−01 クドウベルト

の2本です

チャッキングメカ

チャッキングメカも全部のギヤを取り外し(Eリングで止まっています)、全て新しくグリスアップします。グリスアップ後、逆手順で組み立てます。各ギヤの位相はそんなに凝ったメカでは無いのでバラす前に良く見ておけば問題ないと思います。あのいまいましい色のグリスが無くなっただけでも気分がいいです。

チャッキング出来ない

ここまでやって、トレイの出し入れとチャッキングメカの動きはスムーズになったのですが、まだCDの認識に失敗する場合があります。TOCの読み込みを始めたらそのまま回り続けそのうち止まります。どうしてだろう・・・。

CD認識しない

ちなみにCD認識に失敗すると「DISC」表示も何も出ない状態になります。

ゴム板

良く観察してみるとCDトレイが中に入りすぎ、CD中心部がチャッキング位置より奥側に入り込んでいるため、きちんとCDが固定されず、認識できない場合があることがわかりました。CDトレイの入り込み位置を合わせる為に今回はゴム板を切って使う事にしました。

ゴム板

2.5ミリ厚のゴム板を小さく切ってトレイのストッパー?部分に貼り付けました。他サイトのこの機種の写真を見てみると何やらここにゴムパーツが付いているようなんですが、私のには付いていませんでした。

チャッキングOK

無事100パーセントCDを認識するようになりました。いざきちんと動き出すとジャンクのCDだろうがCD−Rだろうがおかまいなしにガンガン読んでくれます。ここのところジャンクCDに凝っていてCD−Rで編集して聴いている私にとっては頼もしい限りです。

機種名

この機種の前面パネルの印刷は1つのウイークポイントの様で、私の機体も一部印字が剥げかけていてちょっと残念です。掃除するときも洗剤によっては簡単に印字が取れるようなので気を付けましょう。それにしてもデジタル出力有りを示す「D」の文字が一際誇らしげに大きいのが何ともいい感じです。

 

 無事CDを認識するようになりました。うちの環境で聴いてみますと音の粒立ちが結構良く、低域から高域まで良く出ており、特に低域の再現性が良く、ちょっと艶っぽさには欠けるような感じもしますが全体的にはっきりした音でなかなか好みです。現在ではこの機種に変わるような性能のプレーヤーはそれなりに出費しないとありませんから、大事に使っていこうと思います。

(2005年6月 記)


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