偉大なB級女優・「ひし美ゆり子」さん

 

  この女優さんを知ったのは、おそらく殆どの方と同じきっかけだと思います。円谷プロの不朽の名作・第一期特撮シリーズの金字塔「ウルトラセブン」。この作品でヒロインの「アンヌ隊員」を演じていたのがひし美ゆり子(当時の表記「菱見百合子」)さんです。「ウルトラセブン」に至っては昭和42年の本放送より数え切れない程リピート放送されており、また子供の世代が変わる数年毎にブームとなり新たなファン層を開拓している作品ですから、説明の必要は無いでしょう。現在ではDVDもリリースされ、DVDレンタルもされておりますので、容易に視聴することが出来ます。

 「ウルトラマン」のヒロインであった「アキコ隊員」こと桜井浩子さんはどちらかと言えばスレンダーな女性でしたが、「アンヌ隊員」は一転、小柄ながら制服がはち切れんばかりの健康的なお色気のある女性でした。現在でも特撮ヒロインの人気投票をやると必ず上位に食い込んできます。

  しかしながら女優としてのひし美ゆり子さんの代表作と言えばこれしかありませんで、世間的にはひし美ゆり子=「アンヌ隊員」としてしか認知されていません。そのアンヌ隊員ですら、本来は東宝の青春シリーズ等で活躍されていた豊浦美子という女優さんが演じるはずだったのに、豊浦さんがクレージー・キャッツの映画出演の為降板してしまって急遽決まった代役だったという状況でした。もっとも今となってみれば代打で演じた役が後年まで残るというある意味ラッキーではあるのですが。

 当時の円谷プロは東宝と密接な関係があり、アンヌ隊員役も東宝の女優さんから選ぶということになっていたようですが、お嬢様の殿堂みたいな当時の「東宝女優」の中にこういう「ヴァンプ女優」とも言うべきタイプの方がおられて、しかも子供番組のヒロインに決まったというのもおもしろい話だと思います。

 しかしながら、やはりある意味変に優等生的な東宝映画の中では使いこなせなかったのか合う役が無かったのか、その後は映画ではちょい役のクラブのホステスとかそういう役ばかりで、あとは東宝テレビ部制作のテレビドラマにゲストや代役で「細々と(笑)」活躍されていましたが、昭和47年に東宝を退社されます。

 東宝を辞めた直後、プライベートで記念に撮ったヌード写真を撮影したカメラマンが「週刊プレイボーイ」誌に本人の承諾無く売ってしまいます。プレイボーイ誌には「変身!アンヌ隊員」のタイトルで大々的に掲載され、同時に仕事のオファーが殺到。「お色気女優」としての道が突如開けてしまいます。この後昭和50年まで週刊誌のグラビア・東映や松竹系の成人映画・テレビ映画「プレイガール」等のお色気仕事からテレビでは一般ドラマ作品やバラエティの司会まで幅広い仕事をこなして結婚を機に引退されます。本人は辞めたくて仕方が無かったそうです。

 その後はすっかり普通の主婦として暮らしておられ、たまにウルトラシリーズのイベント等に出られるくらいで、ファンの間で「アンヌ隊員」や「健康的お色気女優」としてずっと密かな人気を保って居たことは全くと言って知らなかったそうです。

 そして’96年、出版社からエッセイ本の執筆の依頼が来ます。ご本人は「私が本を書いて誰が買うのかしら」くらいに思いながらもまたと無い機会だからと時間をかけて執筆されたそうですが、何とこれが朝日新聞の書評に載る程の大評判となりました。ここで初めてご本人はファンがひし美ゆり子を忘れていなかった事に気づき、また、ファンにとってはまさに待ちに待った「ご本人再登場」だった訳です。

 この動きはちょっとしたムーブメントとなり、その他のウルトラ俳優さんたちのエッセイ本のきっかけとなり、またひし美ゆり子再評価の動きが起こり、’97年にはファン有志による公認ホームページ「ゆり子の部屋」が立ち上がり、現在も盛況です。まだ芸能人本人参加のホームページが珍しかった頃に、しかも円谷プロの公式ホームページより先にインターネット進出したというのも人気の程がわかるエピソードだと思います。またその後も出版依頼や、出演作品のソフト化が相次ぎ、軒並みヒットという状態で人気未だ衰えずと言った感じです。

 素顔のご本人は面倒見の良い姉御肌の気さくなおばさんって感じの人で、アンヌ隊員のイメージとはちょっと違いますが、非常に距離感の近い方ですので、イベント等でもファンの方々と気さくにコミュニケーションをとられています。

 現在はあまりイベント等にはご出演されませんが、公認ホームページ「ゆり子の部屋」のBBSでファンとのコミュニケーションをとるのが一番の楽しみだとか。「ゆり子の部屋」は資料的にも充実しており、興味のある方はリンクページに載せてますので訪問してみて下さい。

 私も以前はずいぶんとBBSに書き込ませていただき、またイベント等でお会いしてなんとか名前と顔は覚えていただいてるようで、ファン冥利に尽きます。清楚と妖艶という全く違う2つのイメージで私の意識を駆け抜けて行った、私の永遠の憧れの女優さんなのです。

(写真は掲載許可をいただきました。ありがとうございました。)

(2005・3月記)


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