SHARPパソコン X68000 EXPERT-HDのバックアップ電池交換

 

X68000 

 

 SHARPのパソコン(正式なネーミングは「パーソナルワークステーション」と銘打ってあった)X68000シリーズの中の1モデル、EXPERT-HDです。型番はCZ-612C、CPUは当時のパソコンマニアの憧れ、マッキントッシュと同じMC68000(10MHz)を搭載しています(モトローラ純正の石じゃなくて他メーカーの互換チップだったような気もしますが記憶が定かじゃありません)。CPUの型番が名前の由来になってます。2MBのメインメモリ、40MBのSASIハードディスク搭載。とにかく当時としてはずば抜けてハイスペックでゲーム用途にも向いており、また、ソフトウェアの開発環境も豊富に提供されていて、パソコンマニアの羨望の眼差しを集めていたマシンです。

 EXPERT−HDは1989年3月の発売。定価は466,000円もしてました。写真のモニターは含まない本体のみの価格ですからかなり高価でパソコン少年なんかにはとても買えるシロモノではありませんでした。あ、ちなみに右の黒いタワー型のマシンの方です。モニターの下はこれまたマイナーなビクターのMSX2パソコン、HC−95です(MSX2のくせして定価198,000円もしたマシン。知ってる人居るかな?)。

 本体の上にDOS/V用のATX電源が載っていますが、このマシンもX68000の定番故障、「電源の電解コンデンサー破裂による死亡」を経験してまして、ATX電源を外付けで使用できるように改造してあります。そちらの方はまた別の機会に触れてみたいと思います。

 しかし、Windowsが出る前のこの頃までのパソコンがホビーマシンとしては一番おもしろかったような気がします。各社各様個性ありありで気合い入ってましたし。今はなんかどこのメーカーも十把一絡げな気がするんですが、これって単なるノスタルジーですかねぇ。

 

1)ある日突然・・

 いつものようにというかかなり久しぶりにX68000の電源を入れる。・・・と、マシンは立ち上がらず画面に「エラーが発生しました。リセットしてください」の文字。何とも不親切なそれだけでは何のことかわからないエラーメッセージに従いリセットボタンを押す。しばらくするとまた同じメッセージ。HDDのアクセスランプは点きっぱなし。全く立ち上がる気配は無い。

 こういう場合はまず「何らかの理由でSRAMの内容が壊れている」事がほとんどです。回避方法としてはフロッピードライブにシステムディスクないし何らかの起動ディスクを入れて「OPT1キー」+リセットでフロッピーから立ち上げます。しかし、今回はそれをやってもフロッピーを読みに行こうともせず同じメッセージを繰り返すのみ。

 となると原因として一番可能性があるのは「SRAMのバックアップ電池が切れている」事です。そこで今回はバックアップ電池の交換を行いました。

(2)バックアップ電池を調べる

マンハッタンシェイプ

 本体です。マンハッタンシェイプと呼ばれるツインタワーには右にメイン基盤他、左にフロッピードライブ、電源部、HDDなどを内蔵しています。今でも十分通用するデザインと言われますが、私も大好きです。このデザインといい、当時は(今も)珍しいオートイジェクト方式のフロッピードライブといい、当時本当にカッコ良かったです。フロッピーが5インチなのがさすがに時代を感じますが・・・。

EXPERT

 このX68000のロゴもカッコ良かったです。当時、購入してユーザー登録した人にはこのロゴが入ったシャープのカード電卓が会員証としてプレゼントされました(私もまだ持っています)。その下には「パーソナルワークステーション」の記述があり、その下にモデル名が入っています。このX68000というマシンはシャープが「10年間は大きなモデルチェンジをしない」と半ば公約していたこともあり、あまり大きな仕様変更は行われませんでした。(X68030を別物と考えれば、ですが)。そのため、ユーザーは新しいマシンが出ても周辺機器でパワーアップすることで最新モデル並みにグレードアップできるという恩恵があった一方、大きなモデルチェンジを繰り返すライバル機のPC−98シリーズやFM−TOWNSと比べると徐々に目新しさが無くなって行ったという弊害もありました。

底面ネジ

 バックアップ電池はタワー内部では無く、底面にある基盤に付いています。まずはひっくり返して機体底の5本のネジを取ります。これだけではまだ底面基盤は外れません。

背面ネジ

 次に、タワー部のケースを開けるため、背面のケースを止めている6本のネジを取ります。(それぞれのタワーに3本づつ)。

ケースをスライド

 ケース横蓋を両側とも開けます。ツメが引っかかって固定されるようになってますので。まずはフタを内部に向かって押し込みながら後方にスライドさせると外れます。ツメはあまり頑丈では無いので無理な力を掛けて折らないように。滑り止め付きの軍手を使うと楽に出来ると思います。

 

HDD側

 開けた電源側タワー内部です。電源は前述のように煙吹いて壊れてしまいましたので取り去ってあります。HDDとフロッピードライブが見えます。

ATX配線

 余談ですが、ATX電源用の自作配線です。おかげさまで電源の心配をせず使えるようになりました。はんだこて使える方ならそんなに難しい改造でも無いので(電源だから配線ミスとショートだけは気をつけて欲しいですが)またの機会に紹介してみたいと思います。

底板止めネジ

電源側タワーの下の方に底面基盤を止めているネジがありますのでこれを外します。

コネクタ

また、底面基盤に3つのコネクタが刺さっていますので、これらを外しておきます。決して線を引っ張って抜いたり手荒なことはしないように。

コネクタ

 反対側のメイン基盤の入っている方のタワーのケースも開けて、底面基盤に刺さっているコネクタ1個を抜いておきます。

底面基盤止めネジ

 こちら側にも底面基盤を止めているネジがありますのでこれを外しておきます。

底面基盤を外す

 これらのネジを外すと底面基盤が金属パネルごと外れると思います。電源スイッチと音量ボリュームのツマミに気をつけて下さい。

底面基盤

 基盤を止めているネジ3本を外すとフレームから基盤が外れます。

バックアップ電池

 外した基盤上にコイン型の電池があります。これが今回交換するSRAMのバックアップ電池です。電池には金属端子が付いていて、これが基盤にハンダ付けされていますので、ハンダを取り去り電池を端子ごと取り外します。(+側2カ所、−側1カ所がハンダ付けされています)

 ちなみに公称3Vの電池なのですが、テスター当ててみたらものの見事に0V。完全に放電してました。

CR2450

 外した電池です。わかりやすいようにむりやり端子を取り除いた状態です。この電池はあらかじめ端子が付いた状態で売られているものもあれば(今回はそのタイプ)普通に電池だけで売られているものもあります。付いていたのはソニー製のCR2450という1次電池です。2次電池では無いので充電回路にはなっていませんでした。

 今回、EXPERT−HDにはCR2450が使われていましたが、X68000のバックアップ電池はモデルによっていくつかの種類があるようですので(おおまかにACEの一部以前のものにはニッカドが付いているようで、ACE後期〜XVIまでがCR2450、あとX68030はVL2440という2次電池が付いているようです。全部確かめた訳では無いのでご自分のモデルのご確認を)

 

(3)電池の入手

 さて、電池はCR2450と判明したのですが、これの入手にちょっと困りました。もともとこの電池は一般の市販ルートでは販売しておらず、それぞれの機械の製造メーカーからバーツとして購入する性格のものでした。試しに普通の電気屋さんでは無理だろうと言うことで近くの電気パーツ屋さんで頼んでみたのですが、そういうことで「取り寄せが出来ない」と断られました。仕方ないのでネットで探してみると、いくつかの通販で発見できました。電池だけならヨドバシドットコムでも売ってました。今回は一緒に電池ホルダーも欲しかったのでその中から秋葉原のショップを選んで注文してみると程なく翌日到着。いやぁ、ホントこういう時ってネット通販はありがたいです。ちなみに製造してるのはソニー、FDK,マクセル、サンヨーと結構いろんなメーカーが作っています。

電池ホルダー

 最初に付いていたのと同じ金属端子付きの電池を付けても良かったのですが、どうせならホルダーにしてしまおうと思いました。この電池、持続時間は1800時間以上あるようなので、ホルダーにしたところで次の交換時期までX68000そのものがまだ生きているかどうかわからないのですが(^^;、まぁ気分ということで。ただし、電池ホルダーだと+側の端子の足の間隔が基盤の取り付け穴より広いので、足を切り取りジュンフロン線で配線することにしました。底面基盤の上と電池取り付け部は結構余裕があるのでホルダーは十分収まります。

取り付け後

 このようにしっかり取り付けることが出来ます。次に取り替える日まで末永くX68000を愛用することを誓いつつ・・・。

完成

 ホルダーに電池をセットして完成!であります。

元に戻す

 後は逆手順で元に戻します。

稼働中

 起動用のプロッピーをセットし、OPT1キー+電源ONで無事フロッピーから立ち上がりました。エラーが出た場合はリセットして再トライして下さい。立ち上がったらSRAMはしっかり空っぽになってますのでSWITCH.X等の設定をしなおしましょう。

 

 てな訳で我が愛機X68000 EXPERT−HD復活です。でももう今時はみんなエミュレーターでX68000使ってるんでしょうね。実機使ってる人も少なくなったのか、X68000関係のサイトの中にはもうずっと開店休業状態のところが実に多くさみしい限り。ネットオークションでも実機の出品は少なくなりました。

 X68000というマシンはWindows時代の今、改めてさわってみると実におもしろいマシンだと思います。もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、今はすごく出来のいいエミュレーターがあります(EX68やXM6等)。また、X68000の場合は先人たちの壮大な努力でもってシャープ所有のシステムソフトウェアを始めとしていくつかの市販ゲーム等が無償公開されていますので、実機を持っていなくても合法的にエミュレーターを使用することが出来ます。まずはぜひエミュレーターでX68000の世界に触れてみて下さい。

(2006.2月記) 


cybernation_up.gif

cybernation_back.gif



inserted by FC2 system